4-2 月の光のもとで

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 あんな場面に遭遇すれば、それは仕方がないことだった。  何が起こったかわからない。  人とは違う圧倒的な力と常識を覆すような戦いを前に、無事生きて帰ってこれたことは奇跡に近いように思う。それほど恐ろしい体験であった。  しかも、人が死んでいくところ、殺すところを初めて見て、平静でいられる方がおかしいだろう。 「君ねえ……」  青かった顔を更に蒼白にして震えだす美柚を見て、ペラ男は呆れた声を出した。  広い玄関ホールの片隅に置かれた絹張りのソファに美柚を座らせると、レンたちが消えた部屋を眺めた。  そして、しばらく唇を指でさすりながら考えるように眺めていたが、今度はソファにぐったり座る美柚の顎を捉える。  エメラルドの妖しく光る瞳はじぃっと美柚から視線を外さず、その表情は怖いほど真剣だった。
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