4-2 月の光のもとで

6/16
前へ
/384ページ
次へ
 美柚はしばらく誰もいなくなった暗闇を見つめていた。  晩夏と初秋が混ざり合うこの季節は、温度差は日によっても時間帯によっても変化が大きい。  夜はもう一枚羽織りを必要とする日が増え、今日はそんなに寒くはないはずなのに、ただ広く暗い空間に寒さを覚える。  ぶるっと身体を振るわせ、美柚はゆっくり立ち上がった。ペラ男の言葉を今は吟味している余裕はない。 「紅夜薗くん……」  ……本当に大丈夫なのだろうか?   今になって働き出した思考に動かされるように、二人が消えて行った部屋を見つめ美柚は歩き出した。  周囲にどしっと重く永い時がまとわりつく。美柚はきゅっと口を引き結び、すんっと鼻をすすった。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1114人が本棚に入れています
本棚に追加