4-2 月の光のもとで

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 夢現つのような光景。  そこには、月の光の中、レンがジンの首に牙を立てて血をすすっていた。まるでそこだけが切り取られたような空間。  美柚は引き込まれるようにその場に立ち尽くした。    冷たさだけを見せる青の瞳。恐ろしい血をすするという行為。だが、それは神聖な儀式のように美柚の目には映った。  美柚に気付いたジンが青白い顔で睨みつけた。その視線だけで美柚を威圧し追いやる。  現実を取り戻した美柚は、一歩、また一歩と後退ると扉を閉め、廊下で頭を抱えてうずくまった。 「やっぱりヴァンパイアなんだ……」  生活が一変したあの日から、吸血するところを見ていなかったのであまり実感がわかなかった。だけど、レンも、あの黒装束の男も、ペラ男も、尋常ではない身体能力であった。
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