4-2 月の光のもとで

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 美柚は部屋を出て行くのが一番だとわかっていたが、その思いと反対にそれを口にしていた。 「私の……、飲んでもいいよ?」 「はっ?! 出ていけと言っただろ」  おもむろに身体を起こしたジンに鋭い目つきで睨まれて、美柚はビクッと身体を震わす。機嫌も体調も下降しているジンを前に、怖がるなという方が無理な話である。  だが、美柚は身体を振るわせたままそこを動こうとしなかった。 「……やっぱりお前はばかだな。美柚、自分の言ってる意味がわかってるのか?」  苛立ちのまま、名前を呼ばれ美柚は落としかけた視線を戻す。  疲れたように肩を落とすジンの瞳は、先ほどまでの苛立ちは薄れ、わずかに困惑しているかのように視線が揺れている。  身体が辛くても、自分の意思を尊重してくれているのだと知り、美柚は覚悟を決めじっと見つめ返した。
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