4-2 月の光のもとで

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「……ばかだな、ほんとに」  そう言ったジンの声は、今までに聞いたことがないくらいに優しかった。白皙(はくせき)のジンは美しく、月の光が彼を惹きたてる。  そこで、美柚はわずかに力を抜いた。  ジンの群青色の瞳がいつもより青みを増している。恐怖心から逃れたかったのか、それとも吸血という行為に現実味がなかったのか、ぼんやりとその綺麗な瞳を美柚は見つめた。  そして身体を引き寄せられ横たえられると、美柚はそっと目を閉じた。  首筋に牙を立てられる。プスッっと皮膚を突き破るその痛みに、美柚は眉をひそめた。最初の痛みが過ぎると、ゾクゾクと寒気とは別のものが這い上がってくる。  何、これ……?   今まで感じたことのない感覚が、美柚の全身を包んでいく。  油断なく鍛え上げた肉体を持つジンに抱きしめられると、強張っていた身体の力が抜け、その逞しい身体に何も考えることなく全身を預けた。
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