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どれくらいそうしていたのか。時間の感覚もないまま、美柚は吸血されるという行為を体験していたが、身体が離れる気配がして目を開けた。
ジンが口についた美柚の血を手の甲で拭い、ペロッと舐めた。その仕草にドキッと鼓動が打つ。
「大丈夫か?」
少し落ち着いたジンが気遣いの色をのせ、美柚を見下ろした。いつもは厳しい硬質の群青色も優しい色に見えるから不思議だ。
美柚はぼうっとしながらもコクンと頷く。想像よりも痛くなく、どちらかといえば気分は悪くない。
ジンはまだ白い顔をしていた。回復するだけ飲めてはいないのだろう。やはり、こちらを考慮してくれているようだ。
「足りない?」
「はっ。お前はもっと自分の心配をしろ。わかっているだろうがこのことは……」
「お兄さんには言わない」
美柚が続きの言葉を奪い、先に言う。
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