4-2 月の光のもとで

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「────わかっているならいい。部屋に戻れ」  突き放すように言われ、美柚もそうしようと思うのだが、熱に浮かされたように力が入らなかった。 「何してる?」  相変わらず低音の声は機嫌が悪そうだが、美柚はジンの傍にいて怖いと思わなくなっていた。  血の儀式を経験し、わずかだが気遣いも見せられ、何より兄思いのところを見てしまったからなのかもしれない。  気力を振り絞ってまで身体を動かす気になれず、美柚はふわふわとした気分のまま目の前のベッドに寝転んだ。 「おい」  横でジンが怒っているが、関係なかった。  美柚の身体はすでに限界を超えていた。精神も疲れ果て、寝転んでしまっては動くことは余計に億劫になった。  ちょっと無理。  美柚は軽く手を振ると、睡魔に誘われるまま夢の中へと落ちた。
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