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「むしろ、親切だと思いますけど。実際のあなたは僕たちでも得体の知れない方ですし。それを言わないでおいた僕たちに感謝してください。どうやら、あなたは吉永さんには嫌われたくないようですし」
久木がわずかに軽く目を見張ったのを見逃さず、レンは内心ほくそ笑む。やられっぱなしなのは性に合わない。
少し溜飲を下げ、レンは鮮やかに笑みを浮かべた。
「……やっぱり意地悪よ」
久木は小さく息を吐き出し、視線を逸らした。
その様子にレンは確信する。やはり、吉永美柚は、もしくは彼女の父の方を含めてなのかはわからないが、彼にとって大事にしておきたい存在なのだ。
美柚を自分たちの屋敷にやる以前から、何となく久木が彼女の存在を気にかけていると思っていたので、当たりだったようだ。
その理由を話す気はないとわかっているので、レンはその事実だけで今は納得することにする。
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