1113人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
矩斗の姿が見えなくなると、美柚は曇った顔で俯いた。
レンにしっかりと掴まれた手は、痛くはないが放してもらえそうにない。
ジンは無関心そうに歩いているが、一定の距離を保ちながらもずっと後ろにいる。
ここまでこれば、今更逃げようなどとは思ってはいない。
自分でも、どうして逃げるという発想がでるのかわからない。
だが、こうも行動を制限されるように囲まれると、気持ち的に追い込まれたような気分になるのは仕方がない。
ただ、理不尽だと思うよりも、この現状の疑問を突き詰めるよりも、美柚の心はすでに萎縮してしまっていた。
というより、疲れていて逆らう気もおきない。
ただ、釈然としない気持ちだけが残る。
全校生徒の視線が集まる真っ只中、そんな一抹の不安みたいなものを感じながら、美柚はなかば引きずられるように教室へと向かったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!