1112人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
美柚が話し終えると、終始黙って聞いていた矩斗は、いつもの優しい眼差しとともに労ってくれる。
「大変だったね」
美柚は頷きながらも、労いの言葉にちょっと泣きそうになった。
ほんの少しだけ目を伏せたが、己の気力を奮い立たせるように強い眼差しで矩斗を見る。
「うん。でも、大丈夫だから」
そんな美柚の様子に、矩斗は目を細め、思案気に眺めながらも話を続けた。
「それにしても、おじさんどこに行ったのかな。美柚ちゃんは心当たりある?」
「まったく何も。そもそも全ての家財道具がなくなっていて、私の荷物もひとまとめにした上にお金と手紙が置いてあったから。一切手がかりはないの」
「そう……」
思案気に顎に手をおき深く考え込んだ矩斗を横目に、美柚は眉尻を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!