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2-5 それぞれの思い
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雨雲がすっかり消え、月が顔を出す。
屋敷と呼ばれるほどの大きな建物の上に、二つの影が見えた。
傾斜した屋根の天辺に平然と座っているのは、紅夜薗兄弟──レンとジンである。
「レン、あれで良かったのか?」
ジンは腕を支えに体重を後ろにかけながら、微笑を浮かべ遠くを見ているレンを見つめた。
いつもは鋭く相手を威圧させる群青色の瞳。それがレンに向けられると、その時だけは思慮深さを思わせる慎み深く重みのある色になる。
「駄目?」
「危険だな。あいつが言ったように記憶を消す方が手早い」
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