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5-1 手紙
部屋の暖かさで、窓が白く曇る。
外は寒く、家の中は暖かい。その温度差はその家の暖かさを表す。人がいる、過ごして、動いている。それだけで、家は息をしているようだ。
キッチンではぱちっとたまに油がはねる音と、食欲をそそる香ばしい匂いが漂っていた。
紅夜薗家の今晩のおかずはキャベツたっぷりメンチカツ。
野菜も摂れて、サクサクの衣。彼らの好みに合わせ肉も多めに入れてある。粗めに切った玉ねぎとの相性もよく、きっとジューシで美味しいはずだ。
美柚は出来栄えに満足し、サラダとともに盛り付けた。
豆腐とわかめの味噌汁をよそいだすと、双子が美柚の傍に寄ってくる。そして何も言わずに運び出した。
いつの間にか、自然と二人は運ぶのを手伝ってくれるようになった。
食事の時間も会話が多いわけではないが、美柚にとっても居心地がよい空間ができつつある。
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