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腰紐の端と端を左右銘々の手で握りしめて、そして動いた。 青菜を紐で括るのと同じ。 女房の無防備な細い首にくるっと一巡させた紐で両腕で出せる渾身の力を持って締め上げていく。 ぎりぎりと柔いものを締め上げていく感触、一瞬にして見開かれた眼に男は自分の顔を見た。 そこに浮かぶのは恐ろしさと驚きと、苦しみ。 男にはそれでも迷いはなく、締め上げる手を緩めることはなかった。 じりじりと生臭い魚油を吸い上げていく灯芯に煽られるように、一心に女房の首を絞め続け、力を失いだらりとした細い腕と閉じられた瞼を見ても、なかなかそれを止めることが出来なかった。 女房の身体が息絶えていくと、嘘のように辺りの生臭さが消えていく。 熱を放つことのない躯は、香りを上げることもないらしい。 そう思った時、やっと男の体は解き放たれて、その場にへたり込んだ。 いつの間にか浮かんでいた額の大粒の汗と荒くなっていた息遣い。 そしていつしか目尻から涙が伝う。 男の低い嗚咽が焔を揺らして行く。
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