私語と死後

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「は?いきなり何を言い出すんだ、君は一体…」  彼女の口から唐突に告げられた言葉に、これまでの事に頭を巡らせた。  だが、身に覚えもなければ記憶にもない。 「ここは死後の世界。でも、ここに来られる方はごく稀なんですよ」  死後の…いや、そんなとこにコンビニなどあるものか。  そもそも私はこうしてここに。  そう思いながら自分の右手に視線を落とすと、確かに少し透けて見えている様な気もする。  目が覚めると私は草原の中にいた。  体を起こすと、その草原は四方に広がり、地平線を境に空は透ける様に白かった。  そう、確かに青ではなく白だった。  さっきまで自室のベッドで寝ていたはずなのに、どうしてこんなところに・・・  記憶を辿りながらあたりを見渡すと、遠くに建物が見えた。  ここがどこなのかさえも分からない私は、とにかくここが何処なのかだけでも知ろうと、その建物に向かった。  それがここだ。 「そうか、私は死んだのか」  妙に納得してしまった。確かにそれならつじつまも合う。というか、それ以外の可能性なんてないだろう。  なにしろ自室から草原へ瞬間移動したのだ。夢でなければ、そんな非現実な事が起こるはずがない。  だが、納得したのはそこだけだ。他にもツッコミどころがいっぱいあるではないか。  きっと私の脳内コンピューターからは煙が出ているだろう。  そんな私に気付いたのか、目の前の女性はカウンターから出てきた。 「突然の事で、お悔やみ申し上げます。って、本人に言っていいのか分かりませんが」  さっきまで二十代前半に見えたその女性は、今度は五十代に見えた。  その事に驚き、目を見開いている私に、彼女は慣れた口調でこう続けた。 「どうやらあなたの目に映る私の姿が変化しましたね」  図星だった。 「そもそも私には年齢なんてものはありません。これはあなたのイメージで姿を変えている様に見えているんですよ」 「それってどういう…」 「多分、あなたはコンビニの店員というイメージから若い女性をイメージし、お悔やみを告げられるというシチュエーションから自身に近い年齢の女性をイメージしたのでしょう」  そういうものなのか?だが、今は全てを受け入れなければならないのだろう。  なにしろここは私にとって未知の世界なのだから。
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