side c  再び、千明

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娘の結婚式当日。 父親のいない娘は、パージンロードを彼女の叔父である私の弟と歩く。 歩く。 はずだった。 「え?何でまだここにいるの?もう始まるんじゃ……」 歩くはずの彼がなぜか今私の隣に座ろうとしている。 「本物が来たからお役ごめん、だとさ」 娘がいないから、とこの日をとても楽しみにしていた弟が不貞腐れたように言う。 本物? 本物って何が? 聞こうと口を開いたが、辺りがその途端に厳粛な空気に変わった。 パイプオルガンで結婚行進曲が流れる。 え?本物って……? 扉が重々しく開く。 向こうから照らされて浮かび上がる、影は二つ。 まだ逆行で顔が見えない。 二人揃って中に入ってお辞儀をした。 扉が閉まり顔が上がったのを見て、私の息が……止まった。
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