憧れ以上、恋未満

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憧れ以上、恋未満

〈風香編〉  昨日、私は部活を引退した。  高校生活最後の引退試合は、残念ながら負けてしまった。勝って終わっていれば、流した涙の意味も、違っていただろう。  小中高と、ずっとバスケを続けてきた。でももう部活に出ることもない。  周りの友人がオシャレに気を遣い、彼氏を作り、いろんな場所に遊びに出かけている間も、私はコートを駆け回り、汗を流していた。  喪失感に襲われていた。私には部活だけだったのかもしれない。  今日は日曜日で、天気がいい。だから特に目的もなく外に出たのだが、急に思い立ち、自転車に飛び乗った。  向かう先は市の体育館。今日は、男子バスケ部三年生の引退試合。女子は負けたから、せめて男子は勝って欲しい。  体育館に入ると、まだ試合は始まっていなかった。コートを半分に分けて、シュート練習をしている。  普段遊び半分であまり真剣に取り組まない男バスも、今日だけは別の顔をしていた。笑みがなく、張り詰めた空気が漂っている。  倉知君の姿を見つけた。ゴールを見上げながら、何か考え事をしているようだった。表情が硬い。     
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