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加賀君と七世君
〈後藤編〉
加賀君が入社したとき、女子社員のほとんどが浮き足立ち、ちょっとした騒動になった。
美形が来た、イケメン来た、と独身者も既婚者も、キャアキャアと騒ぎ立てた。
彼は私のいる営業部に配属になった。
入社後しばらくは、用もないのに営業部のフロアに見に来る女性が多く、周りが迷惑がり、嫉妬からかきつくあたる社員もいた。
でも加賀君が、綺麗で大人しそうな見た目とは違い、男臭くて明るくて、人当たりが良かったせいで、すぐに周囲を懐柔した。上司も先輩も同僚も、彼を好きになった。
結婚して子どもがいた私でさえも、漏れなく彼を好きになった。勿論、恋愛の意味ではない。
人たらし。だと思う。二十二歳という年齢で、世渡りが異様に上手かったのだ。
それでも、アイドル扱いする女子社員には手を焼いていた。
当時彼は付き合っている子がいて、それを何度説明しても、懲りずに言い寄る女が絶えなかった。
見かねた上司が注意したが、効果はなく、加賀君は参っていた。営業部全体で彼を守ろうとする動きはあったが、それ以上に女は厄介だった。
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