空色ナイフ

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 あの日の空の色は今でも覚えている  哀しいくらい青い空だったから  このお金で何買おうかな・・・制服のポケットの中の小銭をジャラジャラさせながら考えた。先生からもらったお金。先生を脅して取ったお金。  美術教師の高木先生。私の義理の兄でもある。お姉ちゃんから婚約者を紹介された時は驚いた。自分の高校の美術の先生だったから。そして二人は結婚し、私達は義理の兄妹になった。  私は先生の秘密を握っている。友達の葉山莉菜から話を聞いた時は驚いた。 「私、この前高木先生のアトリエに招待されて絵のモデルになったんだ。」  高木先生は自宅の他に絵を描いたり仕事するための小さなアトリエを持っている。作業に集中したいからとお姉ちゃんすら中に入れたことはないと聞いていた。それなのに、生徒を連れ込んで絵のモデルにするなんて・・・しかもヌード。そこが問題だ。先生にそのことを言ったら、 「絵を描いただけだ。別に何もしてない。」  と言い張った。芸術家にとっては女の人のヌードを描くのは普通のことかもしれないけど、私達一般人からしたらそれって浮気じゃないか?不倫じゃないか?しかも生徒って非常識じゃないか?と思ってしまう。 まだ25歳と若くてルックスも良い高木先生は女子生徒に人気があった。莉菜も前々から好意を寄せていた。スタイルが良く美人な莉菜をモデルにしたいと思うのも無理はない。 「じゃあお姉ちゃんに言ってもいいの?」  と聞くと、 「それはやめてくれ。」  と言うので、私は手を出した。 「何?」 「お金。」 「は?」 「お姉ちゃんに黙っといてあげるから、口止め料ってことで。500円でいいよ。」 「お前、それ恐喝だぞ。」 「ケチだな。いいや、お姉ちゃんに電話しようっと。」  そう言って私が携帯を取り出すと、 「分かったよ。仕方ないな。」  と先生は渋々財布を取り出した。 「今300円しかないや。」  そう言って100円玉を3個渡した。 「貧乏だな。まあいいや、また次回もらうから。」 「えっ、また来るの?」 「当たり前じゃん。これからちょこちょこ来るからよろしく!」  こうして私は先生のアトリエに出入りするようになった。
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