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今日は葉山が来るからごめん、と高木先生に言われ、アトリエに行けない私は放課後、漫画研究会の部室に向かった。ドアを開けると、相変わらず来ていたのは一人だけだった。2年生の町田亮太。漫画研究会の部員は他にも数人いるのだが、ほぼ来ることはなく、大抵町田と私だけだった。
「お疲れ様です。」
なぜか町田はいつもその挨拶だった。
「お疲れ。」
そう言って私も本棚から適当に漫画を取り出して読み始めた。いつもそうやってお互いに黙って漫画を読んでいるだけだった。
今頃高木先生と莉菜は何してるのかな?本当に絵を描いてるだけなのかな?そんなことを無意識に考えてしまっている自分が嫌になって、漫画に集中しろと言い聞かせた。
「先輩、何かあったんですか?」
滅多にしゃべらない町田に突然そう聞かれてびっくりした。
「えっ、なんで!?何もないよ。」
「そうですか、それならいいです。」
そう言って町田はまた黙って漫画を読んだ。
私は最近どこかおかしいだろうか?いや、最近じゃない。あの人のことを考えてるのはずっと前からだった。
窓の外を暮れていく夕日がなぜか切なかった。
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