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12月を過ぎた頃
─あるところ、彼女は物書きだ。
しがない物書きの彼女は青い空が好きだ。
青い空が、その空から降る雨が、薄く色づいた雪が、見渡しても見渡しきれないようなその色を好んだ。
御伽話の世界じゃ彼女は魔法使い。
─そんな彼女が彼女の住んでいる街を抜け出した日が、彼女が最後に作る物語が始まろうとしている日。
これは、そんな彼女の青い魔法に巻き込まれようとしていた少年が綴るお話。
思いもしなかった知ろうとすることもできなかった、ある季節の思い出話。
少年の秘密の声。言葉。
彼女は自分の好んだコーヒーか紅茶でも飲みながら、御伽話を始める前の少年のこと、懐かしむように遠くから見ている。
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