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熱
「…ただいま。」
僕は家の扉を開けて、体から雨粒を落としながらそのまま部屋の中に入る。
『ただいま』とは言ったものの、実は母さんは海外で仕事をしている人なので、『お帰り』なんて言ってくれる相手はいないんですが…。
今朝家を出る時はヨシキと一緒だったから、いや…殆ど毎朝一緒にいてくれているから、帰ってきた時に誰もいないのはまだ慣れないんだ。
リビングから自室に移って、雨に濡れた制服を次々と脱いでいく。
途中、何度か足が縺れましたが服を着替えて、濡れた制服を洗濯しようと部屋を出ようとした時でした。
「…っ、う……」
また足が縺れ、その場に崩れ落ちる。
「…っ、はぁ、はぁっ…」
息が速く、上がっていく。
頭の中を何かの感覚が占領していって、立とうとしても上手く立ち上がることができない。
─これは『痛み』でしょうか?
おぼつく手で自分の額を触ると、いつもとは温度が違っていることに気づきました。
徐々に視界も霞んできています。
「はぁ、はぁ、はぁっ、はぁ…」
息を繰り返し繰り返して、それでも楽にならなくて、なんだか…保健室での夢をまた思い出しそうだ。
もう…忘れたいのに。
そんな気持ちさえも頭の中を占領していった時、僕の視界は真っ暗になりました。
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