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「…ん……」
「…カラ!
気がついたみたいだな…大丈夫か?」
「…ヨシ、キ……」
ゆっくりと目を開けた。
真っ白な天井と、ヨシキの顔。
ここは…自分の家じゃありません。
「カラ、分かるか…?」
「…あ……」
─あぁ、そうか。
心配そうなヨシキの顔を見て、今僕はどこにいるのかとようやく分かりました。
ここは病院です。
「…ヨシキ……
どうして、僕は…ここに……?」
まだ頭がぼーっとしている。
言葉は少しだけ、発声しにくい。
「昨日、部活が終わった後にカラに電話したんだけど、ずっと不在着信にしかならなかったんだよ。
心配になって…案の定カラの家に行ってみたら、鍵は開きっぱなしで危ないし、カラ本人は部屋で倒れてるし…。
驚いて、マンションの管理人さんと一緒に救急車呼んだんだよ。」
「…そ、そう、なんだ……」
「カラの母さんにも電話したんだけど、今仕事が大詰めのところまできてて、どうしても帰って来れないんだってさ。
『カラごめんね』って言ってたよ。
ほんと、いい母さんだな。」
「…ご、ごめん…。
また、迷惑かけて……」
「…はぁ。
ほんと、カラも相変わらずだな。」
「……何が…?」
ヨシキはまた溜息をついて、真剣な表情になってベッドの上の僕を見た。
ベッドに横たえていた僕の左手が、ヨシキの両手に包まれて思わずヨシキの方を見る。
「カラが前に入院してる時、言った。
もしカラがこの先…ずっと記憶を取り戻せることがなかったとしても、俺はカラの友達でいるって。
別にそれは、記憶がなくなったカラを哀れんで…とか、下に見てるからとか、そんな理由で言ったんじゃない。
俺は自分がカラの友達でいたいから、この先もカラの友達でいるんだって言っただけなんだよ。」
「……ヨシキ………」
「…カラ、だからな?
迷惑だとか思ってないから。
俺が勝手に心配して、勝手にカラの家まで行って、勝手に救急車呼んだ。
いつも朝学校に行く前、カラの家に行くのも…一緒に通学するのも俺が好きで勝手にやってることだよ。」
僕はただ驚いて、聞いていた。
ヨシキはそう言い終わった後、ずっと真剣だった表情を緩めて、笑って言った。
「…カラ。
勝手にやってて、友達気取ってて…
カラにばっかり気遣わせてごめんな。」
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