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─僕は耳を疑った。
「…えっ…い、や……
違う、そんな…こと…っ…」
「俺さ、カラの気持ちちゃんと考えてるつもりでいて、でも実はちゃんと考えてなかったのかもしれない。
今カラに『迷惑かけてごめん』って言われて、初めて…なんか重荷にさせてたのかなって思ったんだ。」
「…ヨ、ヨシキ………」
ヨシキは俯いて、言葉を続ける。
「カラは憶えてないけど…
いや、別に…憶えているか憶えていないかなんて別に重要じゃなかったんだ。
俺にとってはさ、カラは…記憶がなくなる前のカラと全然変わってないんだよ。
だから…やっぱり『カラはカラなんだな』って思ったし、そう思った時、安心したんだ。」
─あれ?
僕は何を言えば…いいんだろう。
やりきれない複雑な気持ちが溢れてきて、でも何か言いたいのに…でもその何かを言葉にすることができなくて。
「…ずっと一緒だったんだよ。
俺達、高校に入学してからカラと知り合って…カラがいると楽しくってさ。
カラが入院してる間はさ、学校…全然ってくらい楽しくなかったんだ。
部活…バレー好きなのにな、部活やってても楽しくなかったし、やりたくないとさえ思ってた、するの辛かった。」
そう言って少し顔を上げたヨシキは、僕が知っているヨシキとの記憶の中で、どのヨシキよりも複雑な顔をしていた。
複雑な顔で…悲しそうな顔でした。
そしてその辛そうな顔で、また僕の顔を見てまた言葉を吐き出すように話した。
「…もしかしたら俺は、今のカラにとっては…一緒にいない方が楽なのかもしれないな。」
「…っ!?え………」
─聞きたくない。
確かにヨシキの顔が見えているのに、僕は僕の視界が真っ暗に染まっていったような錯覚に陥りました。
誰かの『言葉で絶望する』という感覚は、きっとこんな感覚なんだと思いました。
全身に嫌な汗が流れている気がした。
あの夢よりも『今』の方が怖いと思った。
僕が恐る恐るとヨシキの顔を見上げると、ヨシキは何か次の言葉を繋ごうと口の輪郭が動いていて─
「…言わないで下さい!!!」
「っ!?カ、カラ……」
「聞きたくない!!
聞きたくないんです…!!」
今の僕が、初めて声を荒らげた。
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