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頭をポンポンとなでてくれていたヨシキの手は、今は僕の背中を優しくさすってくれている。 「…落ち着けたか?」 そう温かい声で聞かれて、抱き締められている状態のまま、ゆっくりと頷いた。 「カラ。 俺は、カラと距離取るつもりないよ。」 「……えっ?」 驚いて、思わず顔を上げた。 けれどヨシキの肩から顔を出している状態だったので、ヨシキがどんな顔をしているかは分かりませんでした。 「…で、でも……」 「うん、分かってる。 俺がさっき、それっぽい言い方しちゃったから、カラを不安にさせたんだよな。 …そんなつもりはなかったんだよ。 ごめんな?カラ。」 僕の言葉が遮られて、僕の耳に入ってきたのは『絶望』の中から救い出される言葉でした。 「さっきの言葉の続き、聞いてくれるか?」 ヨシキの言葉に、ゆっくりと頷いた。 すると安心したような溜息をついて、またヨシキが言葉を繋げる。 「…ありがとう。 …自分勝手なんだ。 さっきから言ってるけど俺…何でも勝手にやってるだけなんだよ。」 「…そんな、こと………」 「…今のカラの近くに、自分がいない方がいいんじゃないかって考えたの本当だよ。 けどさ、カラ。 何度も言うけど俺って自分勝手な人間だから、そんなの無理なんだ!」 「………え……?」 ヨシキはようやく僕の顔を見て、笑う。 僕の滲んだ視界でも見ることができた。 「…カラの友達でいたい! 高校にいる間、クラスとか変わってもずっと…できれば卒業してからも大人になっても、カラがいたらいいなって。」 「……ヨシキ………」 「ごめん…自分勝手でいたいんだ。 俺がカラの近くにいることがカラの為にならなくても、俺はカラがいないのが嫌だから……」 「…ヨ、シキ……」 ─また、雨粒が溢れそうになってくる。 いえ…もうとっくに溢れています。 「……ははっ。 カラ、今日は泣きすぎだろ。」 「…だ、って……ヨシキが……」 「貰い泣きしそうになるから、勘弁してほしいんだけどな……もう遅いかっ。」 ─ヨシキまで泣いていました。 僕ら2人して…泣いていました。 「…なぁ、カラ。 こんなんだけど…カラの友達やってて、また朝迎えに行って、いいかな…?」 「……バカ…ですか…?」 いいに、決まっているというのに。 さっきよりも滲む視界で頷いた。
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