伝説への希望《のぞみ》

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 ごくり、と二人は同時に息を飲み、レジに注目する。もうさりげなくもなんとも無い。  溝呂木順平は、小銭をレジ台の上に置いた。 「レジ台の上に……直接?」  外木場が眉を微かにひそめた。 「私も実は疑っているんです。最初は彼女に恋する男かと思ったのですがね」  え? 違うの? この話、根底からひっくり返るの? 「ええっと、いち、にい、さん……あっ」   ちゃりーん、と甲高い音。小銭をかき集めようとして落としたらしい。 「きたッ!!」  男二人で手を取り合うな、気持ち悪い。きた、じゃねーよ。 「えっと……あれ?」  レジ台の下をあちこちと見回す野間夕見子。  男二人は顔を見合わせた。 「小銭……」   と、外木場。 「フォーエバー……」  と、店長。 「「グッドバイ」」  は……ハモった?  うわー、殴りたい。  この二人をぶん殴ってやりたい。 「日本記録タイだよ、店長」 「後一つ。後一つ……何がありますか?」  そんな俺の気持ちに全く気付かず、はしゃぐ二人。見苦しいとはこのことか。 「できれば、序盤でもう一つ稼ぎたかったなぁ」 「この後、残されている技が殆どないですよ、外木場さん」  二人は腕を組んで考え込み始める。  そんな事より気になっている事があるんだが……。 「……レジが合わなくなるけど良いのか店長さん」 「「はぁ?」」  え、何言ってんだこいつ的な視線? そしてまたハモった?  つまり、外木場までそんな目?  何々? 俺、間違った事言った? 言ってないよね? 「あのねぇ、君。今、大記録に王手がかかってるんだよ? 小銭の一枚や二枚、些細な事だろうが。最悪、私の財布から補填すりゃいいんだから」  その考え方、店の責任者としてどうなんだ。  ダメだこの二人。  もう俺から彼らに言えることは、死ねぐらいだろうか。 「……一つ思い付いたよ、店長」 「何ですっ!?」 「……いかさま会計(トリッキーチェック)」 「それは……」  絶句する店長。
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