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目の前には溝呂木順平の大きな背中。
その向こうで野間夕見子は袋詰めをしようと商品を並べて物量を確認している。
ふと、彼女の顔が上がり、視線が俺に向けられた。瞬間、分かりやすくオロオロして彼女は慌てた。
機敏な動きで袋をレジ台の下から取り出し、それを開いて物を入れていく。だが、結果は素人目にも明らかだった。
「あっ……」
彼女が絶句している。
入りきらなかったからだ。
そう、袋が小さすぎたのだ。
次の瞬間、背後から大歓声が飛んできた。
「きたぁぁぁぁ。狭すぎる囲い!!」
「日本記録、日本記録ですよっ!!」
「伝説の誕生だよ、店長ぉ!!」
あっけにとられる俺を押しのけ、バタバタとレジの方へかけていく二人。
キョトンとした顔の野間夕見子。そして、溝呂木順平は持っていたカバンの中から小さなケースを取り出した。赤いビロード調の布で覆われた、大きめの指輪ケースの様なものだ。
「ミスレジ打ち選定協会の名において、野間夕見子さんのミスレジ打ち日本記録達成を認定いたします」
「え、あ、え……ありがとうございます」
「いやいや、私もこんな大記録の認定を下すことができて、判定員冥利に尽きます。あなたは末永くコンビニ界の伝説として輝くでしょう」
「こ、光栄ですっ!!」
って、満面の笑みで受け取っているけど気付け。それは威張れる事じゃないんだぞ!!
というか、これ何?
マジでこれ、何なの?
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