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伝説の誕生
酒のつまみにジャーキーでも買っていこうかなぁ。盛り上がる男二人を見るのにも飽き飽きだし。
適当に袋を一つ取り、レジに向かう。
「あっ、先輩どこへ?」
「買い物」
「今は……」
知らん。無視だ。今度は俺が無視してやる。
歩き出そうとしたところで肩をがっしり掴まれる。
振り返ると店長が、怒りに満ちた目で俺を見上げている。
「あんた……何の権利があって、うちの野間の邪魔をする?」
「邪魔? アホか。俺は客だぞ。こいつを買うんだからなぁ」
ジャーキーの袋で店長の禿げ頭をぺちぺちと叩いてやる。
「いや、行かせはしない。ここには全人類の夢と希望が詰まっているんだ」
絶対詰まってない。
断言してやる。
「どうしても行くというなら……」
「待って店長」
「外木場さん?」
「良いんだ。先輩、買い物に行ってください」
そう言いながらニヤッと笑う外木場。
「な……なぜ?」
「良いんです店長。ひょっとすると、先輩が最後のピースなのかもしれない。日本新記録のね」
「どういう……」
「僕を信じて手を放して。さ、先輩。どうぞ買い物へ」
「くそっ……」
真っ赤な顔をした店長が乱暴に俺の肩から手を放した。体もぐらついたことだし、これで訴えてやろうか。まあ、悔しげな顔を見られたのは気分が良いけど。ただ、外木場が寧ろさわやかな笑顔になっているのが何かヤダ。
かと言って、今からやっぱりやーめた、というのも何だか恥ずかしい。
罠にはまった感は満載だけど仕方ない。
俺はジャーキーを持ってレジへと向かった。
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