モッキンバード

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もうたまってたものをばーっと吐き出すみたいに、一気に話す。田んぼと田んぼの間のなんにもない歩道で、彼の思いの丈は溢れた。 彼と知り合ってからそれほど時間がたっているわけじゃないし、書道家としての顔があるなんてもっと最近に知ったようなもんだから、それで彼が今までどんな思いをしてきたかなんて、全然知らない。 けど、付き合いたてほやほやの俺にガーってぶつけたくなるくらい、いろんな奴にいろんな事言われてきたってことなんだろうな、きっと。 何にもなく生きてきた人なんていないんだろうけど、少なくとも彼は俺よりも重いものを背負って来たんだろうと思う。なんかすごい家柄みたいだし。 「ごめん」 とりあえず謝ろう。そういう気持ちがなかったわけじゃない。けど、不快な思いをさせたことには変わりない。 「ううん、ごめん、なんか急に」 彼は戸惑っていた。自分がいきなり思いを吐き出した事自体に戸惑ってるみたい。 寒さですくめた肩を落として、すっかり下を向いてしまう。 女の子に泣かれても戸惑うだけだったのに、どういうわけだか、今はちゃんと彼のことを受け止めて、ちゃんと理解したいと思った。 「溜まってることあるんだったらさ、俺でよければ聞くよ。聞くことしかできないけど」 どれだけ努力しても、どんな本を読んでもわからないかもしれなけど、できることなら、その気持ちをちゃんとわかってあげたかった。
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