モッキンバード

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目の前に細い肩を見て、いよいよ顔が熱くなってくる。すげぇ抱きしめたい。 ―落ち着け、ここで欲丸出しにしたら終わりだ! ―ここで一気に襲って畳みかけて既成事実作ってしまえば! 自分の中の天使と悪魔なんてよく言ったもんだけど、本当に戦ってる。どっちかといえば天使優勢。えらいぞ俺。 「あの、そのまま、シャワー浴びちゃえば?」 パッと出た言葉に、言ってから自分でも動揺した。彼もちょっと不審な顔をしている。必死で弁解するように手をパタパタさせる。 「違う、ほら、体冷えただろうからってこと!」 「あ、あぁ、そうだね」 天使優勢のまま、ごゆっくりと声をかけて浴室から出た。そして革張りのソファに膝をついて項垂れた。 俺今超頑張った。頑張ったよね?誰になんて言ってほしいのかわからないまま、とにかく自分を肯定しようとする。 男同士でとりあえずって感じで付き合い始めて、ちゃんと手をつなぐこともできなくて、まだちゃんと分かり合えてない状態で、襲うなんてしちゃったら絶対ダメだろ! でもこのすっかり元気になってる股間はどうしてくれよう。パンツはいてるだけでも結構苦しくなってる。シャワーの音を聞くとますます鼓動が速くなって、直結して下半身にも響いてくる。悶々とした時間が続いた。 (今のうちにヌいちゃうか) 結果的にそういうことで落ち着いた。少しは気持ちも収まるだろう。決意してパンツの中に手を突っ込んだ途端に、浴室から彼の声がする。 「ねぇ、バスタオルとか、どこにあんの?」 「はぃっ!?」 股間を握りしめた瞬間を見られたわけでもないのに、背中が跳ね上がった。 「タオル」 「たおるっ? その辺にないのっ?」
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