第6章

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「どーうーぞー」 妖精みたいな甲高い声がして バスルームのガラス戸が細く開いた。 「ア……アアア……」 ガラス戸の向こうから 立派な羽飾りのついた孔雀の面がのぞく。 精巧な作りの不気味さと こんな場面を見られてしまった恥ずかしさで 僕の背筋は凍り付いた。 「いやっ……見ないで……いやぁっ……!」 宝石で縁取られた瞳は 仮面の奥から射抜くように じっと僕の醜態を見つめている。 「おい、悪ふざけはやめろ――」 由莉が振り返り牽制するように言うと 「――ベッドルームで待ってる」 仮面の奥 くぐもった声で笑って 孔雀のお化けはいそいそと戻って行った。
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