第6章

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不安げな声が自分の鼓膜を揺さぶる。 「響也は……どこにいるの……?」 髪から垂れる雫が 涙のようにポタポタとローブの袖を濡らした。 「鳥小屋かもな」 「冗談言わないでっ……」 信じていた者に裏切られた気分だった。 この兄弟のせいじゃないと僕には分かってた。 「吸うか?」 「いらない」 「なら行こう」 自分の兄と自分の身体が 僕の心を裏切っている。 「ベッドに入ればみんな忘れるさ――おまえはみんな忘れる」 そんな気がした。
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