第6章

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ベッドルームへ向かう暗い廊下。 由莉は前を歩き、終始僕に背を向けていた。 だからその気になれば 僕はいくらでも逃げ出すことはできたんだ。 全力で逆走し玄関へ。 門をこじ開け暗い山道を逃げ出せば 見つけ出すのは不可能だ。 きっとできたと思う。 由莉にもそれは分かっていたはずだ。 何度もイメージトレーニングのように 自分が夜道を逃げる場面が頭に浮かんだ。 だけどなぜだろう。 僕の身体は歩みを止めず 自分を慰み者にしようとしている男の後を ぴったりとくっついて行った。 正直 ここが運命の分かれ道だった気もする。
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