紹介

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「そうですよ。私の妻ですよ。」 「え?そこにいるんですか?」  その紳士的な人は確かに僕の目の前に座っているというのだが、椅子が引かれているだけで、全然見えない。  とりあえず当たり前の質問をしてみる。 「おいくつなんですか?」 「え?私の妻ですか?私の2つ下で35です。」 「はあ。そうですか。」 「よく若いですねって言われるんですよ。」 「はあ。」  誰にだろう。 「まあ、もう年もとらないから見た目も変わらないんですけどね。ハハッ。」  その紳士は見た目と違わず、紳士的に笑った。 「え?どういうことですか。」 「だって私も妻も死んでるんですから、年はとらないでしょう。」 「で、でも僕は……。」 「死んでますよ。2時間前に事故に遭って。」  そういえば何故ここにいるのだろう。 「まだ死んで間もないから、妻が見えていないのですね。まあ私の妻も死んで間もないですし。」  段々と向かいの人の輪郭が見えてきた。同時に記憶も段々と……。  
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