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「キセキくんも妖怪のようなものが見えるんだって?」 エーカクさんは大福を頬張りながらキセキに問う。 「はい」 「すごいなぁ。こういう仕事してるとね、僕にも見えたらって思うよ」 エーカクさんは言ってから、「ああ、もちろん大変なことも沢山あるよね、ごめんね」と慌てて付け足した。 「俺、見える人に会ったの初めてです。エーカクさんに出会うまで、俺はひょっとしたら一人で幻覚を見てるんじゃないかと思ってたくらいです」 エーカクさんは、妖怪はいると俺に保証してくれた初めての人だった。 「僕のお師匠様は見える人だったからね」 エーカクさんは深く頷いて、優しく笑った。 「キセキの周りには、見える人っていた?」 キセキに、気になっていたことを尋ねてみる。 キセキは頷いて、答えた。 「俺の母は見えないけど感じるみたい。それと知り合いの刀鍛冶に、見えるのが1人」 親が妖怪の存在を信じてくれるなんて、俺はキセキが羨ましかった。 けれど心配性の母を思い浮かべてすぐに、やっぱり今のままでいいと思い直した。 理解者は身近であればあるほど良いが、物事を必要以上に心配する俺の母は理解者には向いていない。 俺にはエーカクさんがいる。 それに今はキセキもいる。 「俺はキセキに出会えて本当によかった」 心から思っていたことがぽろりと口からこぼれる。 キセキは驚いた顔をして、それからすぐに破顔した。 「ありがとう、俺もだよ」 キセキと俺は、互いに良き理解者となれるだろうか。 きっとなれる。 根拠のない自信が俺にはあった。 照れずに『出会えて良かった』なんて言った俺を、嘲笑わずに笑顔で『俺もだ』と返してくれるヤツなのだから。 エーカクさんも茶化したりせず、にこにこと笑っていた。
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