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「マコトはキセキと長いんだっけ」
俺がマコトに尋ねると、マコトは頷いて得意げに話しだした。
「中学からずっと一緒なんだ。こいつ勉強もスポーツも学年トップでさぁ、みんなのヒーローなのに、そのくせ物静かで付き合い悪くて、謎が多いんだ」
「俺……付き合い悪いかな」
キセキは顔をしかめた。
「クラス会には来るよな、けど個人的な誘いは大体断ってるだろ」
「剣道一本で生きてるからね」
キセキは諦めたように肩をすくめた。
キセキもスポーツが好きなんだ。俺は勝手に好感度を上げていた。
「けどキセキ、大学入って変わったよな」
マコトが続ける。
「こんな集まりにも顔を出すようになったんだもん、変わったよ。ケイのおかげかなー」
キセキには沢山刺激を受けていた
キセキも同じように俺と出会ったことで、何かが良い方向に変わっているならいい、と思った。
「そういうケイはどうなんだよ」
カケルが俺に話を振った。
「大学入る前、どんなだったの」
「俺は……どうかな、ずっとサッカーやってたよ」
俺の過去……振り返って、少し寂しい気持ちになる。
部活で仲間はいたけど、友達と呼べる人間は本当に少なかった。
他人には見えないものに怯えて、他人との間に壁を作っていたのだから当たり前だけど。
大学に入ってからは、それを上手く隠せているだろうか?
キセキに出会ってからは、隠す必要がないというだけで、すごく楽になった。
キセキにはそういう感覚があるだろうか。
キセキから貰っている分を、少しでも返せているだろうか。
俺は不安になってキセキの顔を伺い見る。
キセキは俺の不安を知らずに、微笑んで返してくれた。
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