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馬の嘶きが耳に響いて、クレアははっと目を覚ました。薄明かりの漏れる窓を開けば、ガラガラと音を立てて屋敷の裏道を一台の馬車が走り去るのが見えた。
こんな朝はやくからなんだったのだろう、とクレアがぼんやりしていると、部屋の扉がこんこんと叩かれて、ステイシーが顔を覗かせた。
「クレア、館内を案内します。早く着替えて」
促されるままにトランクを開けて、クレアは三ヶ月ぶりにベインズで使っていた濃紺色のデイドレスに腕を通した。白いエプロンとキャップを着用すると懐かしさで気が引き締まり、じんと胸が熱くなった。
今日からまた屋敷女中として広いお屋敷で働くことが出来るのだ。
胸の奥で悦びを噛み締めて、クレアは部屋を後にした。
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