WINTER -笹井良太-

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WINTER -笹井良太-

 真冬の昼下がり。俺は一件の依頼をうけた。 「はい。笹井(ささい)です」 『榊だ。届けて欲しいものがある。三時に、下の喫茶店で』  受話器から聞こえてきた声の主は、大学時代に仲が良かった先輩。  昨日の夜、俺達は偶然このホテルのバーで再会し、都会の夜を背に、長いこと話をした。  届けてくれとは何のことなのか。どうして俺なのか。  疑問点はいくつかあったが、とりあえず俺は支度をして、三時前に自分の部屋を出た。 「悪かったな、笹井。いきなり電話して」 「いえ。俺の方から名刺を渡したんですし」  先輩は、ブランド物のスーツに色シャツという粋な格好で微笑んだ。 (やっぱり先輩は格好いいな)  先輩は大学時代から皆の憧れで、周りにはいつもたくさんの人が居た。  頭が良く、人付き合いも良かった先輩は今、世界でも有数の一流企業に務めている。
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