WINTER -笹井良太-

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 丸みを帯びたグラスを手にしながら、先輩は、ぽつり、ぽつりと、自分の恋人について愛しげに語った。俺は、それをじっと聞いていた。  少しも酒が飲めなかった若い頃、俺はブランデーを一瓶買った。それはまだ、一杯分だけ減ったまま、棚の中にある。  あれは俺の十字架。淡い想いを磔にして、今も闇の中に在る。  少年は、かすかな声で「出ていって下さい」と言った。俺は黙って部屋を出た。  PM4:34任務終了。  先輩はもうホテルから去った頃だろう。俺はこの後会社で重要な会議がある。少年はあの暗い部屋で暖房もつけず独り。  もう会うこともない人達。  俺の人生の一コマが、静かに幕を閉じた。
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