そして、幸せな冬が巡る。 ―榊真澄―(2)

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「君のことが、好きです」  薄茶の瞳が揺れた。 「…もっと…言って下さい」 「好きです」 「もっと…っ」 「好きです」  三回目に告げた時、彼は泣いていた。  クマを包むセロファンの上に涙が落ちて、ぱたぱたと音をたてる。透明な壁の向こうでは、のんきなクマが大きな黒目で智を見上げている。  俺は、そのクマごと智を抱きしめた。
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