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「食べないほっとけどっか行け」
「ジョージつれなーい!!」
腰をくねらせて言う山都を置いて、俺は歩き出した。だけどこいつはしつこく付いてくる。
こうなったらてこでも離さないのがこいつだ。捉まった時点でもう諦めてる。
「ジョージ?」
「屋上、行くんだろ?」
俺は首だけで振り返って言った。山都は一瞬きょとんとして、それから満面の笑みを浮かべた。
……俺も大概甘い。
*****
山都がこうなのは、入学式の日からだった。
俺の中学からこの高校に進学したのは俺だけで、知り合いなんて誰もいない。ざわつく教室で、俺は一人黙って自分の席に座っていた。
変化があったのは、自己紹介のときだ。
「水前中から来た松橋譲二です。よろしく」
それだけ言って、座ろうとした。誰かと仲良くするつもりはない。これで充分だ。
「え!?」
だけど座ろうとする俺を引き止める声が上がった。
振り返ると、髪の長い小柄な女子が立ち上がっている。ぱっちりとした目は驚きに見開かれていて、俺の方に向けられていた。
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