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Aメロ
高校入学にあたって決めたことが二つある。
一つは『他人に期待しない』こと。
人に頼ったらろくなことにならない。十五年生きてきて、身に染みて分かった。
大抵のことは自分だけでやった方がうまくいく。
「思いやりが大事!」なんていっても、まったく同じように考えることのできる人間なんていないのだ。だったら最初から一人でやった方が、めんどうがない。
もう一つは――。
*****
「ジョージ見ーっけ!!」
「おわっ!!」
背中になにかがぶつかってきて、俺は廊下に盛大に転んだ。
いや、『なにか』の正体はわかっている。声を聞くまでもない。こんなことをするのはあいつだけだ。
「ねぇねぇ今日はお昼どこで食べるの? 中庭? グラウンドの片隅? それとも教室のすみっこ? 屋上行こうよ屋上。いいものあるよー?」
声の主は、転がる俺を気にすることなく畳み掛けてくる。「あっそれとも学食? じゃあ一緒するー」じゃねぇよ。マシンガントークやめろ!!
「いいかげんにしろ山都!!」
俺は勢いよく起き上がって、彼女に怒鳴った。彼女は一瞬きょとんとして、それからにっと笑う。
「それとも、お手製弁当食べる?」
そう言って、小さな巾着に包まれた弁当を掲げる山都に、俺は盛大にため息をついた。
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