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「なんだー? 山都。まだお前の番じゃないぞー?」
担任がそう言って、クラスに笑いが起きる。
「あ、すみませーん。ついでだからあたし、自己紹介しちゃっていいですか? 武丘中出身、山都由真でっす!! 好きなことはギターと歌うこと。あとスイーツも好きだしおしゃべりすることとかみんなでわいわいすることも好き! よろしくねー!!」
山都うるせーぞー、と声が上がり、教室が笑いで包まれた。
俺はそっと座って、賑わってるのをぼんやり見てた。
とりあえず、目立たずにすんで良かった。友達なんて作るつもりはない。よろしくなんてする気もない。あの女子が声を上げた理由は分からないけど、教室中の注目はもうあの子に移っている。
いるよな、ああいうやつ。ステージでも目を惹くやつが……ってもうあのことは忘れることにしたんだ。もうあんな思いはしたくない……。
そうこうしてるうちにホームルームも終わって、下校の時間になった。今日から部活見学できるらしいけど、俺はどの部活にも入るつもりはない。カバンを手に教室を出た。
学校から徒歩十五分のマンションには、元々兄貴が住んでいた。うちからだとちょっと学校までは遠くて、住まわせてもらうことになったのだ。
二つの足音が重なる。随分前から気付いてはいたけど、俺はようやく足を止めた。もう一つの足音も止まる。
「あのさ、なんか用?」
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