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振り返った先には、クラスの女子がいた。自己紹介のときに割り込んできたやつだ。本気で尾行がばれてないと思ってたようで、突然振り返って驚いた顔をしている。
「家がこっちとかじゃねぇよな、その顔じゃ。なんか俺に言いたいことでもあんのか?」
彼女は振り向いたときこそ慌てふためいていたが、俺がそう声を掛けると意を決したかのようにぐっと拳を握った。
「松橋譲二くんだよね?」
「あぁ」
「あたし、同じクラスの山都由真」
「あぁ」
そういやそんな名前だった。
山都由真はそこで言葉を切る。一つ呼吸をして、口を開いた。
「ムジカ、って知ってるよね?」
その言葉を聞いて、俺は息を呑んだ。
忘れたくても忘れられない。それは俺が中学時代を捧げた場所だった。
ライブハウス・ムジカ
その名前を聞いた瞬間、鮮やかな光景が頭の中に蘇ってくる。……やめろ。もう忘れたいんだ。
俺の反応を見て、山都由真は確信したようだった。
「やっぱり!! ねぇ、あのね……」
「知らねぇ!!」
気づいたら叫んでいた。
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