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「か、要……ちょっと、マズいんじゃ」
「いいのよ。もう、結婚してることは言ってもいいでしょ?」
「うん、それはもちろん、いいけど……」
*
この時の私達のやりとりは、幸い藍沢さん以外に聞いた人はおらず、要の鬼上司としてのイメージは崩すことなく、私と要が夫婦であることを公表することができた。
鬼上司の本性がオネエであることは、私だけが知っていればいい。
***
「百合ー!今日は休む、今日こそ、休んでデート行こう!」
「ダメに決まってるでしょ!さっさと、行くよ!」
「もう、相変わらず冷たいわ。ねぇ、百合、百合、百合」
「なに?名前、連呼しなくていいから」
「ほんと、百合かわいい。冷たい百合もどうしてこんなに愛らしいの!ツンツンでも、ちょいデレでも、全部かわいい。愛してるわー!」
「はいはい。私も、鬼上司でも、甘々オネエでも、要が好きですよ。ほら、行くよ」
「やっぱり休むー!」
「うるさい!!」
***
私達の日常は、相変わらず騒がしい。
でも、以前は分からなかった夫婦のかたち。
今ではハッキリと、自分達だけの夫婦のかたちを見つけた。
【終】
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