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いつの間にか、富士山が見えていた。
「ゆか、やっと起きた!寝不足過ぎだよ!」
ビックリしたのは隣にいたはずの涼子先輩の姿がなく、代わりにゆうくんがいた事だった。
「ゆかも一緒にトランプやろうよ」
ゆうくんは相変わらずの笑顔。
何だか私考え過ぎていたのかな。もっと素直になれるかな。とりあえず、少し席を立とう……
「ごめん、ちょっと飲み物買って来る」
「それならついさっき、販売の人が後部の方へ向かって行ったよ」
ありがとうと言って私は、新幹線の後部の方向へ歩き出した。
頭が重いのは寝不足のせいなのか薬のせいなのか……ふらつきながら歩く。
次の車両に移ったとき、その待合通路の窓にもたれ掛かり外を眺めた。
もう富士山は梺の方まで来ていた。
去年もそうだ、一人でこうして富士山を見送った気がする。
そうだ、去年と同じなんだ、ゆうくんは私のものじゃない。私は勘違いしてるんだ。
なるべく、私は私のままでいよう。
………………
名古屋から乗り換えて、そこからも長かったけど、やっと四日市駅に到着した。
駅のロータリーに降りると、それはやはり待っていた。
ジブリに出てきそうな、普通じゃ見かけないようなレトロなバスがそこにいた。
私は、笑みとともに言葉漏らした。
「懐かしい、一年ぶり、本当、いつ見てもジブリに出てきそうだよね。」
しまった、今は一年生って事だった。
ゆうくんの顔に?マークがかかっているのが解る……
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