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逃げる様に早足な健治くんの手に引かれ、石畳の路を私は小走りで進んで行く。
昔の香りが漂う、深い木の色合いのお店や、瓦屋根に和を感じる長い塀を過ぎ。
商店街全体が、歴史ある和の風格に染まった大通りが目の前に開けた。
小走りではあるが、病人の私には、かなり負担が大きかった……
「ま、待ってよ。」
健治くんの手を振り解く様に止まった。
少し息を調えないと……
「ごめん。」
そう言って、私をちょっとした長椅子に誘導してくれた。
「ちょっと待っててお水買ってくる」
健治くんは人混みの中へと紛れて行く。
彼の背中を追いながら、周りの風景が私の脳裏に流れ混んできた。
そう去年は、ここをゆうくんと歩いた……
私は思い出したままに歩き始めた……"ごめんなさい。先行きます。"って、置き手紙を残して。
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