上手くいかないゴールデンウィーク

9/22
前へ
/31ページ
次へ
逃げる様に早足な健治くんの手に引かれ、石畳の路を私は小走りで進んで行く。 昔の香りが漂う、深い木の色合いのお店や、瓦屋根に和を感じる長い塀を過ぎ。 商店街全体が、歴史ある和の風格に染まった大通りが目の前に開けた。 小走りではあるが、病人の私には、かなり負担が大きかった…… 「ま、待ってよ。」 健治くんの手を振り解く様に止まった。 少し息を調えないと…… 「ごめん。」 そう言って、私をちょっとした長椅子に誘導してくれた。 「ちょっと待っててお水買ってくる」 健治くんは人混みの中へと紛れて行く。 彼の背中を追いながら、周りの風景が私の脳裏に流れ混んできた。 そう去年は、ここをゆうくんと歩いた…… 私は思い出したままに歩き始めた……"ごめんなさい。先行きます。"って、置き手紙を残して。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加