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中頃まで歩いて行くと右に入れる横丁が現れる。
その入口には「これよりおかげ横丁」と書かれた大きな看板、そして、ちょっと犬っぽい石造りのでっかい招き猫が置かれている。
これがおかげ横丁の入り口である。
私は、何かに誘われるように歩いていた。
家族連れや友達、カップルで歩く人々にまみれ、私は思い出と歩いていた。
お店の立ち並ぶ通りを歩き、観客が囲う太鼓の沢山置いてあるやぐらを過ぎ、細目の路地へと入って行く。
細目の路地とはいえ、行き交う人は多く、流石はおかげ横丁だと思う。
楽し気に歩く人々の中、思い出と共に歩く私は、気づかないうちに、もうすでに過去の人になってしまってはいないだろうか。
過ぎ行く人に私は本当に見えているのだろうか?
振り向いたら私の体が倒れてる……何てこと……
私は不安になり少し、横目で振り向いた。
そんなことはなかった。
そんなことあるわけないよね。
休憩出来そうな屋根付の長椅子が沢山置いてある所があった。少し疲れたから休もう。
空は青々と清みわたり、路地をまだ少し肌寒い風が通り過ぎる。それがまた心地良い。
この路地の先を行くと、確か射的やヨーヨーつりなんかが並んでいたはず。
懐かしい、確かそこに何故か宝くじ屋があって、スクラッチを買ったら3000円当たった記憶が……。
ゆうくんと話したかったな……。
涙が出てきたから、うつむいた。
その時だった。夢かと思った。けっこう奥まで来てたし。
「ゆか!探したよ」
彼はナイキの靴が好きで、黒で首が長くマークが赤い物は彼のお気にいりだった。
7分の少しゆったりとしたジーンズに、爽やかな色のシャツを風に泳がす。
目の前には、ゆうくんが立っていた。
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