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宴会も終りみんな部屋に戻ったあと、私は夜風に当たりたくって民宿の玄関を出た。
すると一人佇む、ゆうくんの姿があった。
「あれ、ゆか、どうしたの?」
「夜風に当たりたくって、ゆうくんこそどうしたの?」
潮の香りがする夜風は、肌を洗ってくれるように通り過ぎていくものだから、とても清清しい気分をつれてくる。
「僕も、夜風に当たりたくって」
夜風達は、幸せも連れてきてくれたようだ。風の音に混じって低音で響くゆうくんの声が、なんだか心地よい。
「ここは、海と港が見えて良い場所だね。今日はゆかが下調べしてくれてたお陰で凄く楽しかった。」
楽しかったのは私の方……。
「夏休みは、北海道だっけ?」
「うん、そうだよ」
「今度は僕が調べておくからだから、一緒に回ってくれないか?」
うれしい、心からうれしい、涙でそうでヤバイ。ちょっとしゃがんで笑うふりして涙拭くしかない。
「いや、そんなに笑わなくとも……」
「だって、もう調べちゃったんだもん」
去年も行ったからね。
「そんな~」
また、変顔してる。
「わかったじゃあ今度のプランは全部ゆうくんに任せる!」
涙は拭き終わったからまんべんの笑みで答えた。
「よし!わかった!下調べ出来てるってことは場所は知ってるの?」
「小樽だよ」
小樽、思い出しただけで良い場所だった。
石畳で舗装された道路は人力車が行き交い。街の街灯はランプで、建物はレンガ造り、まるで明治時代にタイムスリップしたかのような町並みだった記憶がある。
「わかった!楽しみにしてて!」
「楽しみにしてるね!」
本当にたのしみだなあ。
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