私だけが君を見ていた

プロローグ

　今日は平日だから、昼間はお客さんが少ない。
　さっきのお客さんが来てから、もう小一時間は経っただろうか。

　花の手入れも一通り終わったので、私は店のブログを更新していた。

「こんにちは。」

　店の入り口に目をやると、常連さんではない若い女性が立っていた。
　彼女は、かわいらしい花柄のワンピースを着ていた。

「青いヒヤシンスの球根ってありますか？」

　私は一瞬固まった。
　これを買いにきたお客さんは、初めてじゃないかな。

　一呼吸おいて、ありますよ。と答えた。

「土と鉢植え、それから肥料もください。」

　結婚して最近引っ越してきたんですが、この辺は花屋さんがあまりなくて。
　新居で育てたいのですが。

　彼女はそう言って、照れくさそうに笑った。