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でも今この腕の中にいるのが麻耶なら、あいつが俺に対する下心というのはきっとそういう事なのだろう。
この態度は悪ふざけでやっているとは思えないし、この表情は俺が幾度となく群がる女にさせてきた物と類似している。
胸中で溢れ出す欲望の扉の鍵を早く乱暴にこじ開けて解放を求める様な、縋る甘えた顔。
「なぁ。どうして欲しい?」
答えなんて聞かなくても分かるのに意地悪く聞いてみた。
俺の経験値は並みじゃないんだよ。
男は女に翻弄されるフリをして、カブリと噛み付くその瞬間を遊びながら待っている。
1番美味しいその時に、一気に貪って骨抜きにするのだ。
あ、でも麻耶は男だから特殊な例だな。
それでもこうやって俺に自分は真侑だと言い張っているのだから、今はそれで良いのだと思う。
単純で妙な麻耶の思惑にまんまと騙されてやろう。
何も追求せず関与せず、目の前にある現実だけを当たり前にして一々考えない。
その裏に隠された真実も本当の麻耶の気持ちも、俺には必要ない。
「なぁ。どうされたい?」
もがき出した真侑擬きを大人しくさせる様に、腕の力を強める。
今の俺の瞳孔は、面白い玩具を与えられた純粋な子供の様に爛々と光っている事だろう。
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